退職後の健康保険と年金の切り替え|任意継続・国保・扶養の選び方
退職して次の会社にすぐ入らない場合、健康保険は「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」のどれかを選び、年金は国民年金に切り替えます。期限は、国民年金と国民健康保険の届出が14日以内、任意継続の申出が退職日の翌日から20日以内です。倒産・解雇などで離職した人は国民健康保険料の軽減、失業した人は国民年金保険料の特例免除を使える場合があります。
手続きの期限と窓口
会社の健康保険と厚生年金の資格は、退職日の翌日になくなります。そこから次の手続きをします。
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 任意継続に入る | 退職日の翌日から20日以内(郵送は必着) | 協会けんぽの都道府県支部(健康保険組合の人は組合) |
| 国民健康保険に入る | 資格を得た日(退職日の翌日)から14日以内 | 住所地の市区町村 |
| 家族の扶養に入る | 家族の勤務先に確認 | 家族の勤務先 |
| 国民年金(第1号)に切り替える | 退職日の翌日から14日以内 | 住所地の市区町村(電子申請も可) |
任意継続を選ぶかどうかは20日以内に決める必要があります。国民健康保険の保険料と比べたい場合は、退職前から試算を聞いておくと間に合います。
健康保険は3つから選ぶ
任意継続:会社の健康保険に最長2年入り続ける
加入の条件は2つです。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あること。前の会社の期間も1日も空かずにつながっていれば通算できます。任意継続の期間と共済組合の期間は含みません。
- 退職日の翌日から20日以内に申出書を出すこと。20日目が土日・祝日なら翌営業日までです。
保険料は、在職中に会社が負担していた分も自分で払うため、退職前の保険料のおよそ2倍になります。協会けんぽの計算方法は次のとおりです。
- 退職時の標準報酬月額 × 住んでいる都道府県の保険料率(令和8年4月に始まった子ども・子育て支援金の率を含む)。40〜64歳は介護保険料も加わります。
- 標準報酬月額には上限があり、令和8年度は32万円です。令和7年9月30日時点の協会けんぽ全体の平均(318,100円)から決まっています。たとえば退職時の標準報酬月額が41万円の人は32万円、26万円の人は26万円で計算します。
- 保険料は原則2年間変わりません。ただし、保険料率や上限額の変更、40歳・65歳への到達、保険料率の違う都道府県への転居で変わります。
- 家族を扶養に入れても、保険料は増えません。
- 納付期限は毎月10日です。6か月分または12か月分をまとめて前納すると割引があります。
健康保険組合に入っていた人は、組合の規約で上限の扱いが違う場合があります(健康保険法第47条)。額は組合に確認してください。
注意点もあります。
- 初回の保険料を期日までに払わないと、任意継続に入らなかったものとみなされます。2回目以降を期日までに払わないと、納付期日の翌日に資格を失います。
- 任意継続中に新しく発生した病気やけがの傷病手当金、出産手当金は支給されません。退職日まで継続して1年以上被保険者だった人が退職時に受けていたものは、続けて受けられます(健康保険法第104条)。
- 途中でやめたいときは申し出ます。申出が受理された月の末日まで加入し、翌月1日に資格を失います。就職して会社の健康保険に入ったときも資格を失うため、届出が必要です。
国民健康保険:市区町村の保険に入る
国民健康保険の資格は、届け出た日ではなく退職日の翌日から始まります。届出は14日以内に世帯主が行います。協会けんぽの資格を失ったことの証明が必要と言われた場合は、年金事務所で発行してもらえます。
保険料は世帯単位で、前年の所得や加入する人数などをもとに計算します。計算方法は市区町村ごとに違います。所得が基準より低い世帯には均等割・平等割の7割・5割・2割の軽減があり、災害などの特別な事情があるときは減免や納付猶予を受けられる場合があります。
倒産・解雇・雇止めなどで離職した人の国保軽減
雇用保険の次のどちらかに当たる人は、国民健康保険料(税)が軽減されます。
- 特定受給資格者(倒産、解雇、退職勧奨などによる離職)
- 特定理由離職者で受給資格がある人(更新を希望したのに契約が更新されなかった、病気・家族の看護・通勤困難など正当な理由のある自己都合の離職)
軽減の中身は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算するものです。前年の給与所得が300万円なら、90万円として計算します。給与所得以外の所得は軽減されません。
軽減される期間は、離職日の翌日が属する年度の翌年度末までです。たとえば2026年9月30日に離職した場合、翌日の10月1日は令和8年度なので、2028年3月31日までが対象です。雇用保険の給付を受ける期間とは別に決まります。
どちらに当たるかは、ハローワークで受給資格が決まるときに判定されます。軽減を受けるには市区町村への申請が必要です。必要書類と軽減後の額は、お住まいの市区町村で確認してください。自分の離職理由がどちらに当たるかは、自己都合と会社都合の違いで整理しています。
家族の扶養に入る:本人の保険料はかからない
家族が会社の健康保険に入っていれば、その被扶養者になれる場合があります。被扶養者には保険料の負担がありません。
協会けんぽ(手続きは日本年金機構)の収入要件は、これから1年間の見込み収入が130万円未満であることです。60歳以上または障害者の場合は180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)は令和7年10月1日以降の認定から150万円未満です。あわせて、同居なら家族(被保険者)の収入の半分未満、別居なら仕送り額より少ないことが必要です。
雇用保険の失業給付も収入に含まれます。日本年金機構の案内では、130万円未満の基準の場合、雇用保険の受給者は日額3,611円以下なら収入要件を満たします。待機期間中は扶養に入れる場合がありますが、日額3,612円以上の基本手当の支給が始まったら、扶養から外す届出が必要です。
健康保険組合は基準や扱いが違うことがあるため、家族の勤務先に確認してください。受給中の扶養の考え方は失業保険を受給中に扶養に入れるかで詳しく説明しています。自分の基本手当日額の目安は失業保険の計算で出せます。
3つの比べ方
| 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 | |
|---|---|---|---|
| 保険料の決まり方 | 退職時の標準報酬月額 × 保険料率(上限あり) | 前年の所得・加入人数など(市区町村ごと) | 本人の負担なし |
| 家族の分 | 扶養家族の保険料はかからない | 加入する人数に応じて決まる | ― |
| 加入できる期間 | 最長2年 | ほかの健康保険に入るまで | 収入要件を満たす間 |
選ぶ順番の目安は次のとおりです。
- まず家族の扶養に入れるかを家族の勤務先に確認します。失業給付の日額によっては入れません。
- 扶養に入れないなら、任意継続の保険料(協会けんぽ支部や健康保険組合)と国民健康保険の保険料(市区町村)を両方聞いて比べます。国保の軽減を受けられる人は、国保のほうが安くなる場合があります。
- 任意継続を選んだ後でも、申し出てやめれば国民健康保険や扶養に移れます。国民健康保険は前年の所得で計算するため、退職の翌年度は保険料が下がる場合があります。
年金は国民年金に切り替える
20歳以上60歳未満で、退職後すぐに厚生年金のある会社に入らない人は、国民年金の第1号被保険者になる手続きをします。
- 期限:退職日の翌日から14日以内
- 窓口:住所地の市区町村の国民年金窓口。マイナポータルからの電子申請、年金事務所や郵送でも手続きできます。
- 持ち物:基礎年金番号がわかる書類またはマイナンバーカードなど。離職票など、厚生年金の資格を失った日がわかる書類を求められる場合があります。
- 保険料:月17,920円(令和8年度)。納付期限は翌月末日です。手続きから約2週間後に納付書が届きます。
どの月の分から払うかは、退職日で変わります。3月31日に退職した人は4月1日から第1号になり、4月分から払います。4月15日に退職した人は4月16日から第1号になり、やはり4月分から払います。
配偶者が厚生年金に入っていて、その扶養に入る場合は第3号被保険者です。自分で保険料を払う必要はなく、手続きは配偶者の勤務先を通して行います。
反対に、自分が扶養していた配偶者(第3号被保険者)がいる場合は、配偶者も同時に第3号でなくなります。配偶者も第1号への切り替えが必要です。
失業による特例免除
保険料を払うのが難しいときは、未納のままにせず免除を申請します。通常の免除は、本人・配偶者・世帯主の前年所得で審査されます。退職直後は在職中の給与が審査に入ります。
退職した人は「失業等による特例免除」を使えます。退職した人の前年所得をゼロとして審査し、ほかの審査対象の前年所得が基準内なら、免除または納付猶予が認められます。審査対象は、免除が本人・配偶者・世帯主、納付猶予が本人・配偶者です。実家で親が世帯主の場合、免除の審査には親の所得も入ります。
- 免除の種類:全額、4分の3、半額、4分の1。50歳未満は納付猶予もあります。
- 必要書類:勤務先から届く離職票のコピー、またはハローワークで交付される雇用保険受給資格者証・受給資格通知のコピーなど、失業の事実がわかる書類。
- 申請先:市区町村の国民年金窓口、年金事務所(郵送・電子申請も可)
- 審査結果:申請から約2か月後に届きます。
- 申請は年度ごとです。特例免除を受けた人も、翌年度に改めて申請が必要です。納付期限から2年以内の期間なら、さかのぼって申請できます。
免除を受けた期間は、将来の老齢基礎年金に一部が反映されます。全額免除なら、保険料を全額納めた場合の2分の1です。納付猶予の期間は年金額には反映されませんが、受給に必要な期間には数えられます。どちらも10年以内なら後から納めて(追納)年金額を増やせます。
未納のままだと、病気やけがで障害が残ったときや亡くなったときに、障害基礎年金や遺族基礎年金を受けられない場合があります。
保険料の額や軽減・免除を受けられるかは、世帯の状況や加入していた健康保険によって変わります。最終的な判断は、協会けんぽ支部・健康保険組合、市区町村、年金事務所で確認してください。
記事は一般的な制度の説明です。個別の受給可否や金額は、ハローワークなどの窓口で確認してください。