自己都合と会社都合で何が変わる?給付制限・給付日数・国保軽減の違い
離職理由が会社都合(倒産・解雇などの「特定受給資格者」)になると、自己都合と比べて給付制限がなくなり、所定給付日数が長くなることがあります。受給資格に必要な加入期間も短くなり、国民健康保険に入る場合は保険料の軽減も受けられます。一方で、1日あたりの金額(基本手当日額)は離職理由では変わりません。
「自己都合」「会社都合」は雇用保険ではどう分かれるか
「会社都合」は通称で、雇用保険では次のように区分します。
- 特定受給資格者:倒産や解雇などで、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職した人
- 特定理由離職者:特定受給資格者以外で、有期契約が更新されなかった人(本人は更新を希望していた場合)や、病気・家族の事情など正当な理由のある自己都合で離職した人
- 上記以外の一般の離職者:転職などの正当な理由のない自己都合、定年、自分から更新を希望しなかった契約期間満了など
どの区分になるかは、会社や本人の申告だけでは決まりません。最終的にはハローワークが判定します(後半で説明します)。
違いの一覧
| 区分 | 主な例 | 受給資格に必要な加入期間 | 給付制限 | 所定給付日数 |
|---|---|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 倒産、解雇、退職勧奨 | 離職前1年間に6か月以上でも可 | なし | 90〜330日 |
| 特定理由離職者(雇止め) | 更新を希望したのに契約が更新されなかった | 離職前1年間に6か月以上でも可 | なし | 離職日が2027年3月31日までなら特定受給資格者と同じ |
| 特定理由離職者(正当な理由のある自己都合) | 病気・けが、家族の看護、通勤困難など | 離職前1年間に6か月以上でも可 | なし | 一般の離職者と同じ(90〜150日) |
| 一般の離職者 | 定年、自分から更新を希望しなかった契約満了 | 離職前2年間に12か月以上 | なし | 90〜150日 |
| 一般の離職者(正当な理由のない自己都合) | 転職、キャリアアップ | 離職前2年間に12か月以上 | 原則1か月 | 90〜150日 |
国民健康保険料の軽減は、上の3つ(特定受給資格者と、受給資格のある特定理由離職者)が対象です。どの区分でも、ハローワークで求職の申込みをしてから7日間の待期があります。
給付制限:正当な理由のない自己都合は原則1か月
正当な理由のない自己都合で退職した場合、7日間の待期が終わったあと、さらに一定期間は基本手当が支給されません。これを給付制限といいます。
| 離職のケース | 給付制限 |
|---|---|
| 正当な理由のない自己都合(離職日が2025年4月1日以降) | 原則1か月 |
| 同上(離職日が2025年3月31日以前) | 原則2か月 |
| 離職日から遡って5年間に、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格決定を受けている | 3か月 |
| 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇) | 3か月 |
| 特定受給資格者・特定理由離職者 | なし |
また、正当な理由のない自己都合で離職した人でも、2025年4月1日以降に受講を始めた対象の教育訓練を離職日前1年以内に受けた場合は、給付制限が解除されます。離職後に受講する場合は、受講を始めた日以降の給付制限が解除されます。対象になる訓練かどうかはハローワークで確認してください。詳しくは給付制限の解説にまとめています。
給付制限は再就職手当にも影響します。給付制限がある人は、待期満了後の1か月間に就職した場合、ハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職でなければ再就職手当の対象になりません。
なお、解雇であっても重責解雇は特定受給資格者に当たりません。
所定給付日数:同じ年齢・加入期間でも最大180日の差
所定給付日数(基本手当を受け取れる日数の上限)は、離職時の年齢、被保険者であった期間、離職理由で決まります。
特定受給資格者(と、離職日が2027年3月31日までの雇止めの特定理由離職者)の日数は次のとおりです。
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
一般の離職者(自己都合、定年、正当な理由のある自己都合の特定理由離職者など)は、年齢に関係なく次の日数です。
| 被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 65歳未満の全年齢 | 90日 | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
一般の離職者の「1年未満・90日」は、主に特定理由離職者が6か月の加入期間で受給資格を得た場合に当てはまります。
たとえば40歳で加入期間が12年の人なら、自己都合では120日、会社都合では240日です。45歳以上60歳未満で加入期間20年以上なら、150日と330日で180日の差になります。障害のある方など就職困難者には、別の日数表があります。
「被保険者であった期間」には、条件を満たせば前の勤務先で加入していた期間も通算できます。通算できるかはハローワークで確認してください。年齢・加入期間・離職理由を入れると、所定給付日数と給付制限を反映した受給の見込みを失業保険の計算で確認できます。
受給資格:会社都合なら加入6か月でも受け取れる
基本手当を受けるには、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。特定受給資格者と特定理由離職者は、離職日以前1年間に通算6か月以上あれば受給資格を得られます。
被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切り、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月を1か月と数えます(11日以上の月が足りない場合は、賃金の支払いの基礎になった時間数が80時間以上の月も1か月と数えます)。
入社8か月で会社が倒産した場合は、6か月の要件を満たせば受給できます。同じ8か月でも正当な理由のない自己都合なら、前の勤務先の期間と合わせて2年間で12か月に届かない限り受給できません。
国民健康保険料の軽減(手続きは市区町村)
会社を辞めて国民健康保険に入る場合、特定受給資格者と特定理由離職者は保険料(税)が軽減されます。国民健康保険料(税)の具体的な算定方法は市区町村の条例などで決まるため、手続きと金額の確認はお住まいの市区町村の窓口で行います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 雇用保険の特定受給資格者、または受給資格のある特定理由離職者 |
| 軽減の内容 | 保険料を計算するときに、前年の給与所得を100分の30として扱う |
| 期間 | 離職日の翌日が属する年度の、翌年度の末日まで |
| 対象外 | 一般の離職者(正当な理由のない自己都合、定年など)、高年齢受給資格者(65歳以上で離職した人)、特例受給資格者 |
| 手続き | 届け出が必要(方法と必要書類は市区町村で確認) |
期間の例です。離職日が2026年9月30日なら、翌日の10月1日は2026年度に属するため、軽減は2027年度末の2028年3月31日までです。
100分の30になるのは給与所得だけです。事業所得など、給与以外の所得は軽減されません。国民健康保険に加入している間は途中で就職しても対象が続きますが、会社の健康保険に入るなどして国民健康保険を抜けると終わります。
軽減後の保険料は世帯の構成や市区町村の料率で変わります。退職後の健康保険を選ぶときは、窓口で軽減後の額を確認してから比べてください。
特定受給資格者・特定理由離職者になる代表例
特定受給資格者の主な例
- 倒産(破産・民事再生・会社更生などの申立て、手形取引の停止など)
- 事業所の廃止、事業所の移転で通勤が困難になった
- 解雇(重責解雇を除く)
- 退職勧奨を受けた(以前から常設されている早期退職優遇制度への応募は除く)
- 採用時に示された労働条件が、実際と著しく違っていた
- 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった
- 賃金が85%未満に下がった(本人が予見できなかった場合)
- 離職直前6か月の間に、連続3か月で45時間、1か月で100時間、または連続2か月以上の平均で月80時間を超える時間外労働があった
- 上司・同僚からの故意の排斥、著しい冷遇や嫌がらせを受けた。セクハラなどを会社が把握しながら必要な措置を取らなかった
- 有期契約の更新で3年以上雇われていたのに更新されなかった。または、契約時に更新すると明示されていたのに更新されなかった
- 会社の責任による休業が3か月以上続いた
特定理由離職者の主な例
- 有期契約の満了で、本人は更新を希望したのに合意できなかった(「更新する場合がある」など、更新の確約まではない契約)
- 体力の不足、心身の障害、病気、けが、視力・聴力の低下などで離職した
- 妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長措置を受けた
- 父母の死亡や病気で扶養が必要になった、常時看護が必要な親族がいるなど、家庭の事情が急変した
- 配偶者や扶養すべき親族との別居を続けることが難しくなった
- 結婚に伴う転居、保育所の利用、事業所の移転、配偶者の転勤などで通勤が不可能・困難になった
- 退職勧奨に当たらない人員整理で、希望退職の募集に応じた
実際に該当するかは、個別の事情と資料をもとに判断されます。自分のケースが当てはまるか迷うときは、ハローワークで相談してください。
離職理由に納得できないとき
離職理由は、次の流れで決まります。
- 会社が離職証明書に離職理由を書き、ハローワークに提出します
- 原則として会社を通じて、本人に離職票-2が届きます(2025年1月20日以降は、会社が電子申請で手続きし、本人がマイナポータルの連携設定を済ませているなどの条件を満たせば、マイナポータルで受け取れます)
- 本人は離職票-2の離職理由欄を確認し、自分の主張を記入して、住所を管轄するハローワークに提出します
- ハローワークが会社と本人の両方の主張を把握し、資料で事実を確認したうえで判定します
会社が書いた離職理由に異議があるときは、離職票-2の離職理由欄で、離職者記入欄のうち自分が主張する理由に○を付けます。そのうえで、具体的事情記載欄(離職者用)に離職に至った原因と経緯を書きます。異議がなければ、離職者記入欄のうち会社が選んだものと同じ理由に○を付け、具体的事情記載欄(離職者用)に「同上」と書きます。離職票の各欄の読み方は離職票の見方で説明しています。
主張を裏付ける資料があれば、ハローワークに持参します。厚生労働省のリーフレットでは、次のような資料が例に挙がっています。
| 主張する理由 | 資料の例 |
|---|---|
| 解雇 | 解雇予告通知書、退職証明書、就業規則 |
| 希望退職・退職勧奨 | 希望退職の募集要綱、応募したことが分かる資料 |
| 賃金低下・未払い・長時間労働 | 労働契約書、給与明細書、賃金低下の通知書、振込日が分かる通帳、タイムカードの写し |
| 雇止め | 労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書 |
| 職種転換・配置転換 | 採用時の労働契約書、配置転換や転勤の辞令の写し |
| 事業所の移転 | 移転の通知、移転先と通勤経路が分かる資料 |
ハローワークは、必要に応じて本人と会社の双方から改めて事情を聴きます。会社の主張だけでも、本人の主張だけでも決まりません。
ハローワークの判定(処分)にも納得できない場合は、都道府県労働局の雇用保険審査官に審査請求ができます。期限は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です。文書でも口頭でもよく、ハローワークを通じて出すことも、審査官に直接出すこともできます。
事実と異なる離職理由を申告して受給すると、不正受給として返還や納付を命じられることがあります。記入は事実のとおりに行ってください。
記事は一般的な制度の説明です。個別の受給可否や金額は、ハローワークなどの窓口で確認してください。