65歳以上の失業保険(高年齢求職者給付金)|30日分・50日分の一時金と年金との関係
65歳以上で会社を辞めた場合、雇用保険からは基本手当(いわゆる失業保険)ではなく、高年齢求職者給付金という一時金が支給されます。額は基本手当日額の30日分(雇用保険に入っていた期間が1年未満)か50日分(1年以上)で、2026年8月1日からの上限は50日分で372,500円です。65歳以上の老齢年金とは調整されないので、年金を受け取りながらでも受給できます。
基本手当との違い
どちらを受けるかは、離職した日の年齢で決まります。雇用保険では誕生日の前日に1歳上がる扱いなので、65歳の誕生日の前々日までに離職すれば基本手当、前日以降に離職すれば高年齢求職者給付金になります(東京労働局 被保険者に関するQ&A)。
| 項目 | 基本手当(65歳未満で離職) | 高年齢求職者給付金(65歳以上で離職) |
|---|---|---|
| 受け取り方 | 認定日ごとに、認定された日数分 | 認定は1回だけで、まとめて一時金 |
| 日数 | 所定給付日数90日〜360日 | 30日分または50日分 |
| 必要な被保険者期間 | 離職前2年間に通算12か月以上(特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月以上でも可) | 離職前1年間に通算6か月以上 |
| 日額の上限(2026年8月1日から) | 年齢区分ごとに7,450円〜9,110円 | 7,450円 |
| 受給できる期間 | 離職日の翌日から原則1年。病気・出産・育児などで延長できる | 離職日の翌日から1年。延長はできない |
| 老齢年金との調整 | 65歳になるまでの老齢厚生年金は、求職の申込みをすると支給停止 | 調整されない(両方受け取れる) |
受け取るための条件
次のすべてに当てはまる必要があります。
- 65歳以上の雇用保険の被保険者(高年齢被保険者)として働いていて、離職したこと
- 離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6か月以上あること
- 働く意思と能力があるのに仕事に就けない「失業の状態」にあること
被保険者期間は、離職日から1か月ずつさかのぼって区切り、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月を1か月と数えます。そうした月が6か月に足りないときは、賃金の支払いの基礎になった時間が80時間以上の月も1か月と数えます。離職前1年間に病気やけがなどで30日以上続けて賃金を受けられなかった場合は、その日数分だけ「1年間」を延ばして数えます(最長4年)。
次のような人は失業の状態とは認められず、原則として支給されません。
- 次の就職が決まっている、すでに働いている(試用期間を含む)
- 自営を始めた、または自営の準備に専念している
- 会社の役員に就任している(予定や名義だけの場合も含む)
- 家事や学業に専念している
65歳以上の人が、65歳以降に雇われた場合も含めて雇用保険の対象になったのは2017年1月1日からです。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、本人や会社の希望にかかわらず加入します。
2か所で働いている場合(マルチジョブホルダー制度)
2022年1月1日から、65歳以上で2つの勤務先の労働時間を合計して週20時間以上になる人は、本人がハローワークに申し出ることで雇用保険に加入できます。1つの勤務先の週所定労働時間が5時間以上20時間未満で、それぞれ31日以上の雇用見込みがあることが条件です。
この制度で加入した人は、片方の勤務先だけを辞めた場合でも高年齢求職者給付金を受けられます。額は辞めた勤務先の賃金だけで計算し、日額の下限は適用されません。辞めたあとも別の2か所で加入要件を満たしている場合は、引き続き被保険者となるため受給できません。
いくら受け取れるか
1日あたりの額は、基本手当日額と同じ方法で計算します。
- 離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金(賞与は除く)の合計を180で割り、賃金日額を出す
- 賃金日額に給付率(80%〜50%。賃金が低いほど高い率)をかけて日額を出す
- 日額に30日または50日をかける
65歳以上の人は、年齢区分のうち「29歳以下」と同じ表を使います。60〜64歳の表(上限7,830円、給付率は45%まで下がる)ではありません。2026年8月1日からの上限・下限は次のとおりです。
| 日額 | 30日分 | 50日分 | |
|---|---|---|---|
| 上限(賃金日額14,900円超) | 7,450円 | 223,500円 | 372,500円 |
| 下限 | 2,562円 | 76,860円 | 128,100円 |
賃金日額が5,480円以上13,490円以下の場合、日額は「0.8w − 0.3×{(w − 5,480) ÷ 8,010}×w」(wは賃金日額、1円未満切り捨て)で計算します。
例として、離職前6か月の賃金が毎月25万円(合計150万円)の場合を計算します。
- 賃金日額:150万円 ÷ 180 = 8,333円(1円未満切り捨て)
- 日額:5,775円
- 加入期間1年以上なら50日分で288,750円、1年未満なら30日分で173,250円
失業保険の計算で離職日の年齢に65以上を入れると、高年齢求職者給付金として日額と一時金の額を計算できます。賃金の額は離職票-2で確認できます(離職票の見方)。
なお、高年齢求職者給付金は雇用保険法上の失業等給付(求職者給付)の一つで、失業等給付として受けた金銭には税金を課さないと定められています。
手続きの流れ
- 会社から離職票-1・離職票-2を受け取る
- 住所を管轄するハローワークで求職の申込みをし、受給資格の決定を受ける
- 待期7日間(失業の状態の日が7日たつまでは支給されない)
- 自己都合退職などの場合は、さらに給付制限の期間を待つ
- ハローワークが指定する認定日に来所し、失業の認定を受ける
- 支給が決まり、本人名義の口座に振り込まれる
手続きに持っていくものは次のとおりです。
- 離職票-1、離職票-2
- マイナンバーカード(ない場合は、通知カードなどの個人番号確認書類と、運転免許証などの身元確認書類)
- 写真1枚(縦3.0cm×横2.4cm。手続きと認定日にマイナンバーカードを提示する場合は省略できます)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(一部の金融機関を除く)
給付制限は、2025年4月1日以降に自己都合で辞めた場合は待期のあと原則1か月です。2025年3月31日以前の自己都合退職は2か月、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は3か月です。離職理由などで1〜3か月の幅があるので、詳しくは給付制限の解説を見てください。
失業の認定は基本手当と違い1回だけです。認定日の時点で就職している、または就職が決まっている場合は支給されません。反対に、認定日に失業の状態であれば支給され、その翌日から働き始めても返還する必要はありません。
受給期限は離職日の翌日から1年
認定は、離職日の翌日から1年以内に受ける必要があります。たとえば2026年9月30日に離職した場合、期限は2027年9月30日です。
手続きが遅れて、認定日から期限までの日数が30日・50日に足りなくなると、その日数分しか支給されません。厚生労働省の案内では、認定日から期限まで15日しか残っていない例で、50日分のうち15日分だけが支給されるとしています。自己都合退職なら、認定日の前に待期7日と給付制限が入る点も見込んでおく必要があります。
基本手当には、病気・出産・育児や、定年退職後にしばらく休養する場合に受給期間を延ばす制度があります。高年齢求職者給付金にはこの延長制度が適用されません。「しばらく休んでから手続きしよう」と考えている場合は特に注意してください。
年金と両方受け取れるか
受け取れます。厚生労働省は、65歳以上の人が受ける高年齢求職者給付金について「年金と併給可」としています。
年金が止まるのは、65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金など)と基本手当の組み合わせです。65歳になる前に離職して基本手当の求職の申込みをすると、申込みをした月の翌月から、受給期間が過ぎるか所定給付日数を受け終わる月まで、その年金は全額支給停止になります。
65歳の誕生日の前後で退職日を決める場合、どちらの給付になるか、いくら受け取れるか、年金が止まるかがまとめて変わります。年金の受給状況によって結論が違うので、ハローワークと年金事務所でそれぞれ確認してください。
何度でも受けられるか
要件を満たせば、離職のたびに受けられます。厚生労働省の案内でも、高年齢被保険者として離職した場合、受給要件を満たすごとに支給されるとしています。
ただし、前回の受給資格の元になった離職日以前の加入期間は、次の判定には数えません。再び雇用保険に入り、改めて「離職前1年間に被保険者期間6か月以上」を満たす必要があります。30日分か50日分かを分ける加入期間も、前に高年齢求職者給付金や基本手当を受けていれば、その離職日以前の期間は通算されません。
反対に、給付を受けずに、前の勤務先を辞めてから1年以内に次の勤務先で雇用保険に加入した場合は、30日分か50日分かを分ける加入期間に前の勤務先の期間も通算されます。また、一時金を受け取る前に再就職し、受給期限内にまた離職した場合は、新しい受給資格を得ていなければ、前の受給資格で期限内に受給できます。
加入期間の通算は職歴によって判断が分かれることがあります。受給できるか、30日分と50日分のどちらになるかは、手続きのときにハローワークで確認してください。
記事は一般的な制度の説明です。個別の受給可否や金額は、ハローワークなどの窓口で確認してください。